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絵画・美術品に親しむ
和流アートの新・潮流 森村泰昌
文・山口裕美
「世界的に評価が高まる日本の現代アーティスト」をクローズアップするコーナー。「現代アートのチアリーダー」を自認する山口裕美さんが、注目の作家や作品にアプローチ、現代アートをコレクションするための必須情報を発信します。
世界が注目する「クール・ジャパン」
90年代、日本国内では経済が衰退し「失われた10年」と言われ、世の中が全体的に活気を失ったようなムードがあったが、実はこの10年間に日本のマンガ、アニメ、映画、演劇、建築、グルメ、ファッション、現代アートは世界から注目を浴び「COOL JAPAN(カッコイイ日本)」のイメージが定着、2005年の現在では、そうした日本に対して憧れを抱くような若年層が世界中に生まれつつある。 特に東京を発信地とする流行のトレンドに対して注目が集まっている。そうした中にあって現代アートは、ルイ・ヴィトンのカラーモノグラムシリーズの生みの親である村上隆や若い女性に人気のある奈良美智の活躍によって、東京発の魅力溢れるパワフルなものとしてクール・ジャパンの主軸になりつつある。
この連載では、世界で評価が高まる日本の現代アーティストの作品を紹介・解説しながら、今後の彼らの活躍を含めて、単なるインテリアではなく子孫に残す日本の同時代の宝物を最良の現代アートコレクションとしてコレクションしていくことを想定し、作品の価格なども明示しながら率直なアート情報の発信を試みる。 第一回の今回は、関西在住の森村泰昌。皆さんもなんとなく見たことがある森村作品だろうが、彼が何故、世界的に注目を浴びているのか、どういうところが素晴らしいのか、を解説していくことにしよう。
歴史的名画に独自の感性で切り込む
森村泰昌が世界的に注目を浴びたのは88年のベネチアビエンナーレのアペルト展であることは間違いない。この時点で、日本国内では彼はまだ知る人ぞ知る存在に留まっていて、歴史的な名画を題材に、その絵の中の登場人物に本人が変身し、演ずる彼の写真作品に対して、かなり冷たい評価があったと思う。しかし、ベネチアでの評価は大絶賛。その後も、森村作品を批評し、分析し、評価したのは残念ながら日本人ではなく欧米のキュレーターやコレクターであった。特にアメリカの有名な美術史家であるノーマン・ブライソン氏が大阪にある森村のアトリエを訪問し、自分の眼で確かめた上で美術雑誌にリポートした後は、森村作品のコレクターは海外で急速に増えていった。ブライソン氏が森村作品を詳細に解説し、評価したことによって、森村泰昌はアメリカの現代アートの歴史に刻まれた。ブライソン氏によれば「例えば、絵画に登場する白人女性がアジア人男性の森村に成り変ることによって、長年解釈してきた作品に別の解釈が生まれ、新しい視点が生まれた」と言っている。そうした新しい解釈を生んだことによって、彼の作品は美術史に刻まれるのである。
そんな世界的に評価がある森村であるが、改めて彼の作品の価格を確認してみるとかなり安い。安すぎると言っていいと思う。例えば、彼の代表作の1つである「シンディ」というアメリカのシンディ・シャーマンへのオマージュである作品は昨年のNYのオークションで約400万円の値段が付いているが、同じ時期の作品が日本国内ではまだ数十万円から入手可能だ。
森村作品は、歴史的名画を元にした名画シリーズ、女優シリーズ、そしてレンブラント、フェルメール、そして最新作のゴヤなどのアーティストシリーズというようにいくつかのシリーズに分けられる。中でも私が注目するのは、女優シリーズ。女優が日本のある場所に天界から降臨し、降り立つ場所にこだわり、意味を持たせた作品である。映画の名シーンのイメージに近づけながらも、実は全く同じではない。例えば、大阪の通天閣をバッグに凛々しく佇むのはブリジット・ブルドー。バルドーといえば、フランス映画界を代表する女優であり、通天閣とはギャップがありそうに思えるが、実はそうではない。
通天閣はもともと、下の部分は凱旋門、上の部分はエッフェル塔をイメージして作られたものだそうで、その通天閣は森村のアトリエから自転車で行ける距離。森村にとって、もっともフランスを感じる身近な場所が通天閣であったわけである。「パリのエッフェル塔が日本人にとってはあこがれの存在であっても、パリの人々にとっては普段見慣れたもの、一方の通天閣は外国人にとっては不思議な建造物であるけれど、自分にとっては非常に近いもの」とインタビューで語っている。改めて作品「バルドーとしての私」を見てみると、ハーレー・ダビッドソンにまたがるバルドーと通天閣のコントラストは、強い印象と共にいわゆる「フランス的なイメージ」が「大阪的イメージ」と渾然一体となって迫ってくる。こうした作品が日本のリビングルームに置かれていたら、もの凄くカッコイイ。
フランスの印象派や後期印象派の絵画作品が十分に魅力あるものだということはわかっているが、日本の現代を表現するこうした森村の作品を理解し、コレクションすることは、まさに「COOL JAPAN」として海外から注目を浴びる日本の宝物と日常的に接することが出来ることを意味する。そして今なら地理的有利差によって日本国内でリーズナブルな価格でコレクションが可能なのである。
以前、アメリカの西海岸の映画関係者の自宅に招かれて、自宅の壁にある森村作品と対峙した経験があるが、アートコレクションにはそのコレクターのアートに対する理解や経験知が見えるように思う。もちろん、どの作品も現代的なインテリアと共に、カリフォルニアの光に違和感無く、置かれており、またパーティーの時には森村作品を話題に盛り上がっていた。日本でもそういうシーンが増えていくことを期待している。
バルドーとしての私・2 Bardot 2
バルドーとしての私・2 Bardot 2
唄うひまわり
唄うひまわり
「絵画の中で振り向く私」
「絵画の中で振り向く私」
ピカソの名画の中のジャクリーヌに扮した森村。そして彼は振り向く。 ピカソは三次元を二次元に表現した先駆者であることを踏まえて、自らアクションを起こしていることになる。この作品は森美術館理事長の森佳子氏のコレクションにもなっている。
「MのセルフポートレイトNo.72/B(あるいは駒場のマリリン)」
東大の900番講堂に降り立ったマリリン。この場所は60年代、三島由紀夫が全共闘と真剣な対論をした場所。現在は東大生が平和に毎日の授業を受けている。マリリン・モンロー、三島、森村という3人の頭文字Mが重なる場所としてこの作品は成立している。アメリカと日本、右翼と左翼などこの作品から引き出される問題は非常に深く、興味深い。
「MのセルフポートレイトNo.72/B(あるいは駒場のマリリン)」
「若いセルフポートレート」
「若いセルフポートレート」
東京で森村泰昌作品を扱うシュウゴアーツの佐谷周吾氏によれば「80年代は50万円足らずであった作品が、97年では150万円、2003年には約300万円になっているので、単純に考えれば20年間でおよそ6倍。それにも増して、森村さんという魅力的なアーティストの作品を自宅に置けることの充足感は言うまでもないでしょう。」とのこと。同感である。
森村作品の価格推移
山口裕美(やまぐち・ゆみ)
山口裕美(やまぐち・ゆみ)
アートプロデューサー&アートジャーナリスト。
「現代アートのチアリーダー」として現代アートの応援団を作るべくウェブサイト「Tokyo Trash」を主宰。
アート系NPO法人「芸術振興市民の会(CLA)」理事。
e A T 金沢99総合プロデューサー。
2004年A R SELECTRONICA net vision 審査員。
著書に「TokyoTrash web the book」(美術出版社)
「現代アート入門 の入門」(光文社新書)
「COOL JAPAN-疾走する日本現代アート」(BNN新社)などがある。

http://www.so-net.ne.jp/tokyotrash/


作品に関するお問い合わせ:シューゴアーツ http://www.shugoarts.com/jp/
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