今回は、第1回「図1アパート・マンション経営事業計画フロー」のステップ5商品・サービスについて、お話します。
アパート経営における収支で、経常収入項目として
(1)家賃
(2)礼金(入居時における謝礼的なもの)
(3)更新料(家賃1か月分、2年後ごと)
(4)敷金(入居時における居住中の保証金的なもの)
(5)駐車料
(6)敷金運用益
を上げることができます。(賃貸経営入門講座第10回)
これらはアパートを借りる時に、借主の支払うもので、その設定や取り決めは、いわはアパート経営における商品の価格といえます。今回は、この中で「(4)敷金」について取り上げます。敷金は、家賃の滞納・不払いがあったときの引当金、その他債務を担保するため、賃貸借契約時にあらかじめ家主へ預ける保証金です。
一般的に、退出時の際に、賃借人の責任による貸室の損傷があれば、その損害額を差し引いて精算する目的とされています。つまり、何かあった時のために預けておくお金で、何も無ければ本来、敷金のほぼ全額が借主に返還されるべきものです。
したがって、アパート経営では税務上の収入とはみなされず、確定申告時の不動産所得の記載欄には敷金の年末残を記載します。
| ○敷金から支払うことができる事例 |
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未払い賃料 |
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故意、過失や通常の使用方法に反する使用による損耗に対する復旧
費用
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新設または造作・模様替えをしている場合の原状回復費用 |
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退去時の清掃撤去費用 等 |
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この敷金の扱いに関して、アパートの経営者として大きな問題となる裁判の結果がでました。
■訴訟の内容
| 賃貸住宅の賃借人は、通常の生活で生じた汚れや破損(通常損耗)の修繕費を負担する義務があるかが争われた訴訟 |
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原告は大阪府の30代の男性会社員。平成10年に大阪府住宅供給公社の住宅に入居し、敷金として約35万円を払ったが、通常損耗分(ふすまの張替え、床の補修)などを差し引かれ、約5万円しか返還されなかった。
賃貸契約には「別表」が添付され、公社側は「表の中に通常損耗分を賃借人が負担するとの記載がある」と主張したが、男性は「別表の記載は明確ではなく、通常損耗分の負担に合意したことはない」と約30万円の返還を求めた。
■ 判決の内容
最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は平成17年12月16日、契約書に明記するなどしない限り、通常損耗分を賃借人が負担する義務はないとの初判断を示した。そのうえで、不明確な記述に基づき、敷金から通常損耗分を差し引いた家主の大阪府住宅供給公社に返還する義務があると認定し、返還額を特定するために審理を大阪高裁に差し戻した。
1審2審は「別表は契約内容の一部で、記載も明確」と訴えを退けた。これに対し、第2小法廷は「別表の文言では、賃借人が通常損耗分を負担する趣旨が明白とは言えない」と判断した。
■ 今後の影響
一般的、契約的にも賃借人が通常損耗分の負担を強いられるケースは多く、今回の判決は、「通常損耗分は原則的に家主が負担すべきだと認めた」ものであり、賃貸契約の実務に大きく影響を与えるといえます。
なお、国土交通省のガイドラインやモデル契約書は、通常損耗の修繕費用は家主側が負担するとしているが、法的拘束力がなく、賃借人側が負担するとの契約は法的には可能になっています。
こうした裁判の結果を踏まえ、今後敷金の取り扱いについて次の点を注意しましょう!
・ 敷金からの原状回復費用を差し引く場合は慎重にする
・ 通常使用による損耗や汚損については、原状回復の対象としない
・ 原状回復費は、借家人に負担させないほうが問題を起こさない
更には、こうした判例による社会通念に加え、敷金問題で注意すべき決まりとし、「国土交通省のガイドライン」(平成10年3月公表)「東京都条例(東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に係る条例)」」(平成16年3月31日成立)を参考にしていきましょう。
■関連参考ホームページ
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン
国土交通省の賃貸住宅標準契約書
東京都条例
以上
マーケティングコンサルタント
中小企業診断士
宅地建物取引主任者
西田 政彦 |